Interview:森づくりコーディネーター✕企業

森林づくりを通じて、企業と地域をお繋ぎする役割を果たせれば。
北海道庁 水産林務部森林海洋環境課 主査
地域振興で、喜んでもらえる仕事がしたい!
この仕事に携わる以前は何をされていましたか。
井内:民間経験者採用という制度で入庁して、今年で8年目になります。その前は家電量販店に13年ぐらい勤め、販売、チラシ広告、CRM(顧客関係管理)などの仕事をしていました。入庁して最初は、留萌振興局で観光や食などを通じた地域振興に携わりました。そこで業務を通じて関わりのあった地域の方に「ありがとう」と言ってもらえた経験が、「喜んでもらえる仕事がしたい!」と思うようになったきっかけです。
その後、保健福祉部感染症対策課でのワクチンの接種体制確保の業務を経て、令和4年に現在の部署(当時は森林活用課)に着任。「道民の森」という森林総合利用施設の利活用をメインに取り組んでいました。そこでも森林づくりを実践されている企業があり、交流をもつ中で、今年度からこれまでの道民の森の業務に加えて、「ほっかいどう企業の森林づくり」の担当になりました。

2007年開始、80の協定が締結された「ほっかいどう企業の森林づくり」。
企業との仲立ちをはじめたきっかけ、経緯を教えてください。

井内:道では、「ほっかいどう企業の森林づくり」を平成19年度にスタートし、森林の整備を希望する企業・団体と、フィールドを提供する森林所有者(市町村有林等)を募集し、森林整備に関する協定締結に向けた調整など、企業・団体と森林所有者の橋渡しに取り組んできました。これまでに80件(※1)の協定が締結され、内41件が現在協定期間中です。
※1:取材時(令和6年(2024年)8月)の協定締結数。令和7年2月現在は84件。
令和5年には特設サイト「ほっかいどう企業の森林づくり」を開設。企業・団体と森林所有者とのマッチングを本格的に推進するとともに、活動の広報・PRも行っています。

(PDFデータはサイトからダウンロード可能)
企業のニーズを聴き取り、さらに掘り起こして、新たな提案を。
コーディネートとは実際にどういうことをするのでしょうか。
井内:基本的には、企業・団体と森林所有者をマッチングし、森林づくり活動をサポートする役割です。たとえば、企業・団体から創立何十周年の記念行事に植樹したい、ゆかりのある土地で森づくりをしたい、何かしらの社会貢献活動を森で行いたいなどと問い合わせがあります。そこを入り口に、具体的なエリアやアクセスに対する要望、実際に森でどんな活動をしたいのかなど、その企業・団体のニーズや期待をよく聞きとりながら、出先機関の振興局の林務課と協力して森林づくりの候補地を掘り起こし、森林所有者と調整し、企業・団体に提案する。そして、実施場所が決まったら、企業・団体と森林所有者と相談しながら協定書と森林整備計画の作成を支援し、最終的にパートナー協定を締結するところまで対応します。

(ほっかいどう企業の森林づくりサイトより)
また、企業・団体との繋がりをより深くしようとする狙いで、令和4年に制度として「森林づくりコーディネーター」制度を設け、現在22名(※2)が登録しています。主に、森林組合の方や林業事業体の方、市町村職員などがコーディネーターになり、互いに事例共有を行いながら、企業・団体と森林所有者の間に立って助言をするような役割を担っています。今後は、様々な企業・団体のニーズに寄り添いながら、企業・団体自身も気づいていないニーズを掘り起こしてそれに対する提案ができるようになるのが理想です。
※2:令和7年2月現在
企業の森への関わり、最近の傾向は?
井内:森林づくり=木を植えるというイメージが根強くあるようで、企業・団体からも植樹のお問い合わせは多いです。こちらとしては、育樹も森林づくりの大切な要素であることを企業・団体にしっかりきちんとお伝えするようにしています。最近では、取引先の方や地域の方を巻き込んで植樹や育樹(間伐、枝打ち、下刈り)などの活動や、森林空間を活用したアクティビティ、ワークショップを実施される企業もあり、本当に様々だと思います。
アクティビティというのは、例えば日本たばこ産業株式会社北海道支社さんの活動では、森林の中でバイクに乗ったり、海と繋がる山のゴミ拾いを楽しんでやったり、山菜採りでびっくりするほど行者ニンニクを採っている方がいたり…。ちょっとユニークな「羊の毛刈り体験」なども行われています。



日本たばこ産業株式会社北海道支社様の活動の様子
(「ほっかいどう企業の森林づくり」サイト 企業等の取り組み事例「日本たばこ産業株式会社・積丹町」から)
企業へのPR、働きかけはどのように行っていますか?
井内:特設サイトを運営しているのが、まず一つ。令和5年にオープンしたこの「ほっかいどう企業の森林づくり」サイトは、企業・団体の皆さまと森林所有者をマッチングし、森林づくり活動をサポートすることを狙いとし、実際に森林づくりのフィールドの候補地を検索する機能もあります。また、北海道の木育に関する情報も掲載しています。
昨年度、東京ビッグサイトで開催されている「エコプロ2023」に初めて出展しました。その際、アカエゾマツのアロマオイルを試香紙につけて呼び込みのようなことをさせていただいたら、「いい匂いがするね」とお客様が集まった。五感に訴えたようなPRができ、色々な方に話を聞いていただけました。もちろんそれがすぐ結果に結びつくほど簡単ではありませんが、「種まき」と思って今年も出展する予定でおります。



エコプロ2023出展時の様子
(「ほっかいどう企業の森林づくり」サイト おしらせ「エコプロ2023出展報告」から)
森づくりの入り口のハードルを下げるプロジェクト、進行中!
新たなプロジェクト「MODRINAE HOKKAIDO(戻り苗 北海道)」について教えてください。
井内:多くの企業・団体の皆さまに、「ほっかいどう企業の森林づくり」を知ってもらいたい、ゆくゆくは取り組んでいただきたい、と考えている中で、私の前任者が展示会で「MODRINAE(戻り苗)」に出会いました。2年間程の間、自分で苗を育て、育てた苗を森に還すというソマノベースさんが運営するサービスです。
これは森林づくりの入り口のハードルを下げるに違いない!ということで、道産落葉広葉樹の苗木をオフィスで育て、北海道の山に植樹する、産官連携の新たな森づくり「MODRINAE HOKKAIDO(戻り苗 北海道)」プロジェクトが昨年立ち上がりました。道庁と企業6社で行う実証実験という形で現在進行中です。

(ほっかいどう企業の森林づくりサイト内おしらせ「新たな森づくり実証実験への協力について」より)
このプロジェクトを通じて、非常にありがたいことに多くの皆様に森林づくりに興味を持っていただくことができ、ここから「ほっかいどうの森林づくり」がさらに広がっていくことを大いに期待しています。また、一緒にやれることをお互い手探りでいろいろ進めていければと思います。
今後について考えていること、計画などはありますか?
井内:最終的には、MODRINAEを入口として、多くの皆様に北海道の森林づくりに興味を持っていただきたいと。さらに、可能であれば、実際に森林づくりに参加していただきたいと。そういった思いが一番ですね。

ソマノベースさんと一緒に仕事をしてみて、民間の力ってすごいなと改めて感じています。私も以前は民間でしたけど(笑)。一貫したサポート体制もそうですし、そもそもの発想が行政とは全然違って、その可能性ってすごいなと。
もちろん、行政には行政の役割やできることもあるので、民間のお力を借りながら一緒に進めていければと思っています。
