気候変動と森づくり
植樹からはじまる森づくり、地域づくりの可能性
我が国の森林のうち、人工林の多くが50年を超え利用期を迎えていることをうけて、植樹による再造林が見直され、国はカーボン・ニュートラルを目指して国民参加による「植樹」を推進(2030年までに1億本)しようという目標が掲げられました。
昭和25年以来、「植樹」は国土緑化運動の中心的な行事として、天皇皇后両陛下の御臨席のもとで「全国植樹祭」が開催されてきたことを筆頭に、「国民運動」として続けてきた歴史があります。
植樹は望ましい未来への願い
長い間、NPOや企業等の多様な主体によって全国各地で活発に植樹が行われているのは、社会に「緑化はみんなの活動」という公的な了解があるのと、植栽、下刈り、枝打ち、除伐、間伐といった森林管理の活動の中でも、比較的危険度が低く、誰でも参加しやすい作業であることなどが考えられます。そして何よりその成長に希望を託し、ともにより良い未来を願う時間に共感するのではないでしょうか。植樹は、森を好きになってもらう言わばファーストステップです。気候変動を抑え持続可能な未来が来ることを願って植える、ラブ・レターのようなものかもしれません。
地域と人のつながりができる
植樹はCO2吸収源を増やすための有効な手段のひとつですが、森林大国の日本ではすでに人の住んでいない地域は森に覆われており、植樹に適した場所は非常に少ないという状況があります。森づくり活動をはじめるにあたっては、植樹だけでなく、間伐や下草刈り作業など森づくり全般にかかる活動についても検討してみてください。
企業・団体が「森づくりサポート制度」などを利用して森づくりをはじめるのは、その森林が所在する地域との関わりをはじめることです。森は地域の田畑とつながっていて、イベントなどの機会にその地域の農産物を使ったお弁当を紹介することもできます。地域で住民の方に協力してもらって、過疎地域で途絶えかけているお祭り行事に企業・団体の方も参加して盛り上げたというような楽しい事例も。
高度成長期以降都市部への人口流出が続くなかで、森のある中山間地域と都市部とは関係が途絶えがちです。植えた樹は長い時間をかけて育っていきますから、企業・団体の森づくり活動によって植樹に参加した人が継続して訪れることで、人流が生まれ、「関係人口」が増大することは地域活性化への一助となります。
都道府県独自の森づくりCO2吸収量認定制度も
さらに、こうした企業による森づくりの成果を「CO2吸収量として認証」する取組が34都道府県(2021年12月時点)で実施されています。カーボンニュートラルへの貢献を可視化しようとするもので、各都道府県知事が認証するしくみです。(※国が認証するJ−クレジット制度(J-VER)とはCO2吸収量の算定方法が異ります)森づくり活動の1つの成果としてPRに活用することができます。
関連資料
林野庁:「森林による二酸化炭素吸収量の算定方法について」
林野庁:「森林による二酸化炭素吸収量の算定方法について」内「【別添資料2】都府県認証制度一覧」(PDF : 103KB)
SDGsの流れが拡大する中で、CSRの一環として森づくりに関わる企業が増えています。実践的な森づくり活動から、地域や都市への森林の重要性を普及啓発する活動、資金提供によりNPO等を支援する活動、さらには本格的な事業活動そのものまで、さまざまな取組が進められています。
森づくり活動を実施するボランティア団体は全国に数千団体あるとも言われ、アウトドアへの関心も高まっている今、できるだけ多くの人々と協働し、みんなで気候変動を抑止できるよう継続的な森づくり活動を進めて行きましょう。