気候変動と森づくり
カーボンニュートラル実現に貢献する森林
CO2吸収源としての森林
日本は、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする「カーボンニュートラル」の実現を目指すと宣言しました。世界でも120以上の国と地域が「2050年カーボンニュートラル」という目標を掲げ、さまざまな取組が進められています。
ここで言われている、温室効果ガスの排出を「全体としてゼロにする」が意味するのは、CO2をはじめとする温室効果ガスの「排出量」から、植林・森林管理などによる「吸収量」を差し引いた合計をゼロにすることです。つまり、カーボンニュートラル実現のためには、CO2排出量を削減すると同時に、吸収作用の保全及び強化をする必要があり、そこで吸収源としての森林が重要な役割を果たします。
林野庁の試算によれば、適切に手入れされている36〜40年生のスギ約451本分の年間吸収量は、2019年度の一世帯の年間排出量約3,971kgに相当。また、日本の2020年度のCO2吸収量のうち、森林の吸収量は約9割でした。植栽、下刈り、枝打ち、除伐、間伐など適切な手入れが続けられている健全な森林は、相応のCO2吸収量を確保することができるのです。
2021年10月に改定された「地球温暖化対策計画」では、2030年度に約3,800万t-CO2(2013年度総排出量比2.7%に相当)の森林吸収量を確保する目標が掲げられ、健全な森づくり等の森林吸収源対策に取り組むことにより、森林が一層のCO2吸収機能を発揮することが求められています。
また、この目標を達成するために政府は、以下のような取組を、地方公共団体、森林所有者、民間の事業者、国民など各主体の協力を得つつ進めていくとしています。(令和3年度 森林・林業白書より)
- 森林・林業基本計画等に基づき、適切な間伐の実施等
- 人工林において「伐って、使って、植えて、育てる」循環利用の確立を図り、炭素を貯蔵する木材の利用を拡大
- エリートツリー等の再造林等により成長の旺盛な若い森林を確実に造成
「伐って、使って、植えて、育てる」という循環の中でも、改めて、「植樹」、「再造林」の意義が示され、とりわけ、成長(CO2吸収)の旺盛な若い森林を確実に造成していくことが重要であると強調されています。
企業によるカーボン・オフセット
世界がカーボンニュートラルに向かって進んで行く中、企業においてもCO2削減に取り組むことは必要不可欠となっています。ここで注目されているのが、カーボン・オフセットです。
周知の通り、カーボン・オフセットとは、企業活動などによって排出されたCO2を、他の場所での排出削減・吸収量で相殺(=オフセット)することです。たとえば、森林が吸収したCO2量を「価値」として捉え、その価値に見合った金額を支払って「カーボンクレジット」を購入することで、排出したCO2をオフセットしたことになります。
カーボンクレジットにはこのような森林吸収系と、機械を新しくしてCO2を減らすなどの排出削減系とがあり、森林吸収系のほうが価格が割高となっています。その一方で、森林吸収系には、クレジットの収益を森林保全活動に還元できる、実際にその森林を訪れることができる、企業が取り組むSDGsの活動としてPRできるなどのメリットがあります。
企業に森林吸収系のカーボン・オフセットを提供する事例の一つ、一般社団法人more treesが提供するカーボン・オフセットサービスは、いつ・どこで・どのように生まれたクレジットかが明確で、「顔の見える」カーボン・オフセットが可能です。また、このサービスによって得られた対価は森の保全活動に還元されます。国内の「more treesの森」の協定先の多くは、国が定めた「J-VER/J-クレジット制度」の認証を受けた森です。
SDGsの実現、持続可能な企業経営の一環として、森林吸収系のカーボン・オフセットは一つの有力な選択肢と言えそうです。
関連リンク
more treesのカーボン・オフセットの取り組みについて
一般社団法人more trees:「森と「空気」を変える 」
J-クレジット制度:「J-クレジット制度について」