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森づくり事例報告

農山漁村・ひと・世代をつなぎ、持続的に利用できる自然と地域に活力を

農山漁村・ひと・世代をつなぎ、持続的に利用できる自然と地域に活力を

認定 NPO 法人 JUON NETWORK(樹恩ネットワーク)

令和3年度林野庁委託事業「国民参加の森林づくり総合推進事業報告書」より

事業(活動)の内容・仕組み

森づくり体験プログラム「森林の楽校(もりのがっこう)」

2021 年度は全国 17 カ所(秋田、福島、群馬 2、埼玉、東京、新潟、富山、長野、岐阜、京都、兵庫、徳島、香川、高知、佐賀・長崎)、28 回開催予定(コロナで中止したものもあり)。
日数、回数、内容は各地域によって異なるが、基本的には森林ボランティア活動「体験」、森林・林業の「学習」、地元住民との「交流」を三本柱とする、森林ボランティア活動の入門編。各地域には自治体、自治会、NPO、大学等、地元の受け入れパートナーがおり、共同で実施している。
群馬県みなかみ町での開催は、公益財団法人三菱 UFJ 環境財団と共催で 1999 年から「水源の森」(国有林の分収育林制度活用)で実施している。
コロナ禍の影響があまりなかった2019年度は 16 カ所 27 回実施の予定であったが、台風やコロナのために中止したものが多く、19 回の実施。参加者はのべ 357 名で、例年よりかなり少なかった(2018 年度は 506名)。毎年学生等 20 代以下の若者が 3 分の 1 で、その他、70 代まで幅広い年代が参加。

森林ボランティア青年リーダー養成講座(東京、関西、四国)

初めての人が参加しやすい体験プログラム「森林の楽校」から、さらに一歩進んで森林ボランティア活動に継続して関わる若き担い手を育てようと行っている。東京では 1999 年、関西では 2007年、四国では 2017 年から開始し、それぞれ第 22 期、第 14 期、第 4 期を終了している。対象は 18 歳から 40 歳まで、過去の参加者を見ると、学生と社会人、男性と女性、それぞれ半々ぐらいずつで、その期によって多少バランスが異なる。
いずれも秋から冬にかけての 5 回連続講座で、第1回はオリエンテーション、第2回〜4回では森づくり活動を行い、第 5 回はまとめという内容だ。これまで約 500 名の若者が参加した。参加者の中には、総務省の地域おこし協力隊になったり、林業の仕事に就いたり、農山村で暮らすようになった人もいる。

企業の森づくり活動への協力

JUON が活動するフィールドにおける企業の森づくり活動の受け入れは、2005 年から始まった。単発の実施は他にもあるが、現在継続している取り組みは次の通り。なお、三井ダイレクト損害保険株式会社からは、「環境保護」団体に対してと、大口の寄付を受けている(2021 年〜)。

  • 太陽生命保険株式会社:国有林の分収育林制度を活用した森林における、社員の森づくり活動に指導者を派遣。三菱 UFJ 環境財団とのつながりがきっかけ。2007 年〜
  • 株式会社アールシーコア(BESS フォレストクラブ):全国各地のログハウス展示場の社員が、森づくり活動を行うため、その地域の森づくり活動団体をコーディネート。東京では、「青梅の森」での活動を、西多摩自然フォーラムの協力の下、受け入れている。BESS フォレストクラブが様々な団体を調べた上で、全国ネットワークである JUON に連絡があったことがきっかけ。2010 年〜
  • NEC グループ労働組合連合会:親子向け森づくり活動を年 2 回実施。また、年 1 回、新執行役員研修において森づくり活動も行っている。つながりのあった労働金庫(中央ろうきん)からの紹介がきっかけ。2013 年〜
  • 株式会社チョイスホテルズジャパン(コンフォートホテル):大口の寄付を受けるとともに、社員あるいは顧客の森づくり活動を年 1 回程度実施。つながりのあるコンサルティング会社の紹介により、社会貢献のコンセプトに合っているとのことで、3つの支援団体の一つに選ばれた。全国で活動をしていることが選出理由の一つ。2017 年〜
  • 株式会社熊谷組:大口の寄付を受けるとともに、その金額に応じて一定程度の参加者が「森林の楽校」に無料で参加。日本 NPO センターの仲介がきっかけ。2020 年〜
  • 三井住友 DS アセットマネジメント株式会社:寄付を受けるとともに、その金額に応じて一定程度の参加者が「森林の楽校」に無料で参加。様々な団体を調べた上で、連絡があったことがきっかけ。2021 年〜

生協の森づくり活動への協力

JUON は大学生協の呼びかけにより設立されたため、生協とのつながりが強い。全国 38 の地域生協およびその連合会が森づくり活動を行っており(JUON 調べ)、その活動の交流等ができないか、日本生活協同組合連合会に相談している。

  • コープみらい「秩父の森」:組合員対象の月 1 回程度の森づくり活動に協力。現在は、コープみらいの職員は、活動当日は参加せず、JUON のスタッフ 3 名(職員やリーダー講座卒業生)で運営している。元々保養所を建てるために購入していた土地を、バブルがはじけたことをきっかけに、森に戻すことになっていた。生協のつながりから協力を依頼されたことがきっかけ。2007 年〜
  • コープみらい東京都本部:2007 年まで東京都が主催した「多摩の森・大自然塾」を引き継ぎ、森づくりフォーラム主催、JUON 事務局担当で活動を行っているが、レジ袋基金の寄付を受けたことで継続が可能となった。現在はレジ袋基金からではないが、寄付は継続。その他、年数回の親子向け講座等にも協力。レジ袋基金の活用の相談をうけていたことがきっかけ。2008 年〜
  • パルシステム東京「いなぎめぐみの里山」:組合員対象の年 4 回程度の森づくり活動(竹林整備)に協力。活動日に、スタッフ 3 名(職員やリーダー講座卒業生)を派遣している。
    元々「樹恩割り箸」を取り扱っていただいていたが、新たな連携を模索する中で、2004 年から開設していた農作業が中心のフィールドの竹林整備が課題になっていたことから、協力することになる。2017 年〜

国産間伐材製「樹恩割り箸」

食堂を経営する大学生協と関係をもつ団体ならではの特徴的な取り組みであり、現在は大学生協食堂(約 70 生協)での使用を中心に学園祭や地域のお祭り等で利用されることも多い。また、一般の食堂や県庁、企業の食堂でも利用されている。日本の森林を守るために国産材・間伐材を使うこと、障害者の仕事づくりに貢献すること、食堂の排水を減らすこと、この 3 つの目的をもって生まれた。なお、徳島から始まった製造も、現在は全国 5 カ所(福島、群馬、埼玉、東京、徳島)の知的障害者施設で行うようになった。

事業(活動)をはじめた背景・理由・経緯

JUON は、大学生協が過疎地域に住む人々と出会うことによって生まれた。一つは「廃校」を大学生のセミナーハウスとして再生したことを通してであり、もう一つは 1995 年の阪神淡路大震災における支援活動を通してである。震災の際、大学生協では学生が住んでいた寮やアパートが被災したことを受け、仮設学生寮を建設した。兵庫県内 5カ所に建て、その一つ、芦屋のテニスコートに建設した 58 棟の仮設学生寮は、徳島県三好郡(現三好市他)の林業関係者から提供を受けた間伐材製のミニハウスであった。
春休みを返上してミニハウスのための製材をしてくれた徳島の高校生・地元関係者と、兵庫でミニハウスを建設したボランティアやそこで生活していた学生が、「自分たちが製材したミニハウスは現在どうなっているのか」、「自分たちが建設したり生活したりしているミニハウスの木材はどんなところから来たのか」との思いから、19 95 年の夏、それぞれの地をお互いに訪問した。この時に、兵庫から徳島に行った人たちは、「ご恩返しに森の手入れを手伝った」とも言うべきか、林業体験をさせていただき、過疎地域や林業がかかえている問題を知ることになった。この林業体験は現在も「四国のへそ 森林の楽校(もりのがっこう)」として継続されている。また、徳島県三好郡には、震災をきっかけとして生まれた山村と都市との交流のシンボルであり、森林ボランティア活動の拠点となる「大学の森」も同時に開設された。
そして、もう一つ忘れてはならないのが、震災の折りに学生をはじめとした若者たちが残していった「場ときっかけさえあれば・・・」「仲間の幅広いネットワークさえあれば・・・」という言葉だった。
多くの尊いものが失われた悲しい出来事であったが、他方では、若者をはじめとした数多くのボランティアが現地に駆けつけた。あの時の思いを、非常時だけでなく日常的に実現する場として、また、大学生協の枠を超え、各地での活動を全国的なネットワークを通じて支援するため、JUON は誕生したのである。

事業(活動)の成果・効果

設立 20 周年を迎えるにあたってミッション(社会的使命)の見直しを行い、この 20 年で力を入れてきたこと、また、今後も継続したい得意なことは、「体験」「交流」「応援」という 3 つのキーワードに集約されるとの考えに至った。
この 20 年にわたって行ってきた取り組みもその一助になったと考えられるが、かつてと比べて、間伐等の手入れの必要性や、森林に関する理解は随分と広がっている。JUONのような組織やボランティアの存在は、森林や農山村についての情報を都市に伝える媒介者としての役割も持っている。ボランティアが増えれば増えるほど、都市と農山村が支え合うネットワークは広がるであろう。
なお、関係人口でいうところの最初のステップが JUON の活動だ。継続して活動を月 1 回程度行っている地域もあるが(東京・奥多摩、京都・亀岡、兵庫・宍粟)、継続よりも、一度でもいいから、森林・農山村に来てもらうことに力を入れてきた。これからも若者をはじめとした都市と農山漁村の人々の、「体験」「交流」「応援」に力を入れた活動を行っていきたい。

事業(活動)をスタートするまでの経過

地域生協(コープみらい、パルシステム東京)と連携した活動がスタートするきっかけは、東京都生活協同組合連合会の環境対策連絡会(現・環境・エネルギー政策推進連絡会)にオブザーバー参加していること。つながりがあったことが大きい。
また、企業との活動は、先方から相談を受けることからスタートしている。これは、JUON の活動が全国で行われていることが強みとなっている。なお、直接連絡が来る場合もあるが、中間支援組織(日本 NPOセンター、東京ボランティア・市民活動センター等)等、JUON とつながりのある組織が仲介する場合の方が多い。

今後の展開方向

最近の企業の森づくり活動の傾向としては、単発で社員の森づくり活動を行うことよりも、寄付、あるいは、寄付と連動した社員の継続した活動への参加が多い。「社員の参加」が重要なポイントになりそうである。
また、SDGs への貢献、脱炭素という文脈で、単なる森づくり活動ではなく、付加価値のある活動が求められているのではないか。
なお、コロナにより中止となってしまったが、企業の新入社員研修として実施する予定もあった。企業研修としての取り組みも期待できる。

事業(活動)の課題、行政・施策等への要望

企業の森づくり活動を現場でサポートするスタッフが、かつてと比べて減っている。「森林ボランティア青年リーダー養成講座」やその後の継続的な活動によって、これまでもスタッフとなる人材は育っていた。しかし、若者はライフスタイルが変わりやすく、転職、転居、結婚等によって、ある一定期間が経つと、活動を離れることになる。よって、継続的に新しい人材が入ってくることが必要であるが、最近は「リーダー養成講座」の参加者が減少していた。
なお、2021 年度より講座のプログラムから宿泊をなくしたところ、参加者数がかつてのような大人数に増加した。卒業生の継続した活動に取り組みながら、スタッフ養成にも取り組みたい。