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市民の森づくり

活動事例

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地域課題をとらえた社会的に意義のある森林づくり

NPO団体の概要

EFFが企業等と取り組む国内森林保全事業は、2001年に岩手県を1号地として、その後、奈良、沖縄、広島、千葉へ、さらに2012年から埼玉、静岡がスタート、2016年には大阪、2023年からは長野へと事業地を広げて、植林・間伐活動を実施しています。主な活動として、春に植樹、夏は草刈り、秋冬は間伐の作業があります。 企業等からの問い合わせに応じて、EFFは社会的な意義を正面に据えたストーリーを提示し、森林保全の担い手とマッチングして事業化してきました。岩手の場合は廃業した牧場での森林再生、奈良は台風被害による土砂崩壊地の再生、広島は山火事被災地の再生など、森林づくりに大義のある活動地を選んでいます。

※現在は上記箇所に加え、埼玉県秩父市・日高市、千葉県富津市、長野県富士見町、大阪府四条畷市が増加(2024/3現在)

プロジェクトの概要と経緯

(1) ザ・パック(株)との協働事業

2001年に岩手県西和賀町で始まり、2002年に奈良県吉野町、2003年に沖縄県恩納村、2004年に広島県竹原市、2009年に千葉県君津市と大阪府高槻市、2012年に埼玉県日高市、2016年に大阪府四条畷市、2023年に長野県富士見町。現在、全国9か所で活動を展開しています。
この事業の仕組みは、ザ・パック(株)が対象商品の売上の一部をEFFに運営委託する「ザ・パックフォレスト環境基金」に拠出し、現場の森林保全活動は地元の森林組合や森づくり団体等の協力を得ておこなうものです。ザ・パック(株)の顧客は、対象商品の購入を通して森林保全に貢献できるというメリットがあります。また、ザ・パック(株)の営業担当者は、顧客に環境対応の一案として対象商品の提案や活動への誘致ができます。社員はボランティアで森林保全活動に参加しています。毎回の参加者は30~50人、スタッフ4~5人で対応しています。

ザ・パックフォレスト環境基金活動
https://www.thepack.co.jp/sustainability/environment/forest.html

(2)中外製薬(株)との協働事業

2019年、中外製薬から同社の工場で使用する水源となる荒川、大井川、鬼怒川の各流域の上流部で森づくり活動ができないかと問合せがありました。このうち、荒川と大井川の上流域では事業に着手していますが、ここでは大井川流域の川根本町での取り組みを紹介します。
2013~15年、EFFは積水ハウスマッチングプログラムの助成を受けて、独自の事業「川根 GREEN PARTY」を実施しました。きっかけは、(株)東海フォレスト(現・(株)特種東海フォレスト)の社員だったEFFの理事から、台風の風倒木被害が激しかった川根本町で森づくりに取り組みたいと提案があったことでした。当時、EFFが川根本町役場に問合せたところ、町は企業の森づくりを受け入れる候補地を持っており、元森林組合長が代表を務めている地元のNPO法人かわね来風(ライフ)も紹介していただき、土地と人がそろって事業に着手することができました。
こうした取り組みの実績があったことから、中外製薬の問い合わせに対して、川根本町での森林保全活動をコーディネートすることができました。毎年、春に植樹、夏に草刈り、秋に間伐と年3回のプログラムを実施し、毎回の参加者は20~30人程度で、スタッフ4~5人で対応しています。

中外製薬株式会社の活動報告
https://www.chugai-pharm.co.jp/sustainability/activity/detail/20231208000000_140.html

実際に活動するにあたっての苦労・工夫

事業に着手する前に、地域ごとの課題を丁寧にヒアリングするように努めています。企業等が参加しやすいように社会的な意義を正面に据えたストーリーを提示して、企画を組み立てています。EFFからこの場所でやりませんかと提案することもありますが、会社の活動が盛んな地域でなければマッチングしない場合もあります。事業前の打合せに十分に時間をかけて、取り組みの目的をすり合わせるようにしています。
すでにこの事業を始めて20年以上経過しましたが、スタートして10年後くらいまでは、とにかく植樹を希望する企業が多かったです。参加者が苗木を植える様子は、写真に撮ると見映えするので、企業が広報するときに都合がよいのでしょう。しかし、実際には植樹後の育林も重要ですので、日本では間伐が必要な山林が増えていることを企業側に伝えるようにしています。これまで事業を継続いただいている企業は、その点をよく理解していただいています。
地域との関係づくりは、設立当初は非常に苦労しました。事業を開始した2000年初頭は、よそからやって来て、お金も人も出して地域の森林づくりに取り組むというEFFの提案に対して警戒を示す山主や森林組合もありました。信頼づくりのために、EFFのスタッフは足で稼ぎ、地域の方々と膝を突き合わせ、腹を割って話し合いを重ねました。実績を積んだ現在は、当初のような不信感を持たれるようなことは減ってきたと思います。

変化・効果・成果、企業・参加者の声など

森林に対する興味関心が低かった人たちが、1回のボランティア活動に参加しただけで森林のことを理解した気になるだけならば、そうした活動は森林のためにならないという人がいます。しかし、実際に参加したことで森林に興味がわいたり、森林の問題に関心を持って何か行動してみようと考えたりする人が現れます。企業との森づくり活動は、森林と直接かかわる体験を多くの人に提供できるので、これからもこの活動を広げていきたいと考えています。

今後の予定・展開

ザ・パック(株)との協働事業は、引き続き地域にあわせた森林保全活動の企画・運営をしていくとともに、新たな事業地の調査も実施していきます。直近では千葉県富津市にて新事業地候補があり、今後は活動の立ち上げに向けて関係各所と調整を進めていきます。
中外製薬との協働事業をおこなっている川根本町はお茶が名産品なので、「美味しいお茶は豊かな森から」というストーリーで立ち上げています。また、中外製薬のアイデアから、森林づくりの発生材を茶箱づくりや木工製品に使うというプロジェクトも始まりました。中外製薬との協働事業にかかわらず、各地で社員ボランティアが伐採した材の有効活用について積極的にチャレンジしていきたいと考えています。

支援の協力や連携の希望など

近年の森林ボランティア活動では、高齢化のために指導者不足が課題となっています。EFFは、森林組合や農林公社などプロフェッショナルの技術を持った人や組織と協働しているので、そうした課題に比較的強いほうだと思われます。
植え付ける苗木の種類は、おもに森林組合に相談して地元在来の種子を優先しています。これまで企業側から注文がつくことはありませんでしたが、山主が植えたい樹種と違う場合には(山主がスギ・ヒノキを植えたいという要望は根強いものがあります)、調整が必要になることはありえます。
森林保全活動を通じて社会貢献に取り組みたいという企業の皆さまには、お気軽に問い合わせていただきたいです。