活動事例

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2004年に千葉県里山条例の具体化を目指して、県内の18団体が協力をして設立された団体です。里山活動団体や土地所有者、企業・個人を結び付けるサポートをしています。
今回は、理事長の佐藤孝之さん、副理事長の伊藤道男さん、尾形孝和さんにお話をうかがいました。
─ まずは団体の概要について教えてください。
2004年に発足しまして、里山活動団体が中心で、当初は18団体でピークは100近く、現在は94団体です。県内には里山団体は150とか200あると言われていますから、半数近くはうちの団体が網羅しているかたちになります。会員団体同士の情報交換や協力がメインの活動ですが、県からワンストップサービス(総合窓口)を委託されていますから、県民向けにさまざまな情報提供したり、問い合わせや要望に応えたりしています。
企業からの問い合わせも、総合窓口のルートから月に1回くらいは来ますかね。ただ、問い合わせは来るんだけど、思うようにいかないというか。
一方、個別の団体では、地元の企業や小中学校・大学などと連携している例はけっこうありますね。企業も、年に1回5人~10人くらいで、まとまって作業に来る場合もあります。
ちば里山センターとしては、総合窓口業務以外に、安全研修とか里山カレッジといった情報提供、さらにコンサル業務も年に2~3件あります。


ちば里山カレッジの様子(令和4年度 第2回「森で育つ子どもたち」より)
─ 企業との森づくりは、団体の中でどのように位置づけられていますか。
伊藤:企業との連携は当センターとしては重要な課題で、さまざまな問合せが来ますけれど思うようにいかないこともままあります。千葉って都会でもあり田舎でもあるので、東京や神奈川のようにはスマートにいかないんですよ。 ただし、南房総の方に移住したり二拠点居住している人で、しゃれたデザインのチラシを作ったりしている力のある団体もありますから、そういう人や団体と連携することは大きなテーマです。
─ その中でも企業とうまく連携できた例や、企業と取り組みたいことがあれば、教えてください。
伊藤:これまでの中でもっともスムーズにいったのは、東京の会社でしたけど、新入社員の1泊2日の研修に使わせてほしいという相談があって、30人程度だと受入可能なので、ある里山団体の現場にご案内して一緒に作業したりして、しかるべき対価もいただいて、われわれも納得できる企業協力でした。
これは社員研修の受入でしたが、SDGsの発想やカーボンニュートラルの視点からも関わりたいと考えています。
それと、県の緑化推進委員会でやっている活動ですが、県内の中小企業に声をかけて、各企業から数人ずつ来るんですよ。全部で30-40人集めて、森づくりのイベントをやるんですね。2人でも3人でも来た企業は、参加しましたと写真を撮って帰られます。森づくりに参加したくても参加できない会社はいくらでもあるわけだから、そういう会社に参加する場を用意するのも、これからの方向なのかなと思います。ただ、それなりの組織力が必要ですけどね。
尾形:企業だけではなく、教育の場から求めが多いのではないかと実感しています。森に子どもたちを連れ出したいとか、どういうプログラムを組めばいいでしょうかという相談はけっこうありますし、今後増えていくのではないかなと思います。
都会の学校では、フィールドがなかなか用意できないから、森へ連れ出すのに抵抗がある場合が多いように感じています。だから、そういう問い合わせに対して提案できるように、ノウハウをきちんと持っておく。受け入れる側のキャパとかプログラム内容とか人材とかのデータベースをしっかり持っておく必要があると思っています。

─ 企業と連携していく際のポイントを教えてください。
佐藤:企業からの問い合わせはあります。担当者が上司から言われて電話してくるんですけど、担当者自身が何をしたらいいのかわからない状況で、研修にあたりバス3台で100人で行きたいんですけど受け入れられますかなどと相談されても、里山のキャパシティや担当するメンバーの人数にもよるので、対応できなかったりするわけです。 われわれも企業と協力体制を組みたいんですけど、企業自体がどういうアプローチを採ったらいいのか明確になっていない場合が多いようです。
伊藤:とくに大手企業の場合、環境問題に取り組むように本社から支店に指示があって、それを受けた担当の方があちこち電話を掛けまくる。だけど、何をすればよいのか定まっていないので話がまとまらない、ということがよくあります。相談を受けたときに「待ってました!」というような対応ができたら良いのですが。
佐藤:だから、こちらから企業側に逆提案できるようなかたちに持っていけたらいいなと考えています。企業からの問い合わせに対して、それはできないと言うと、担当者はその結果を上司に報告して、そこで関係が切れてしまう。
企業には長いスパンで見ていただいて、いきなり何か作業するのではなくて、企業として何がしたいのかとか、どういうことができるのかとか、ゆっくり話し合ったうえで、具体策を練っていくのがこれから大事なのではないかと思います。
千葉県の場合、里山団体の活動地は私有林がほとんどなので、地権者の了解を得ないと何もできません。企業がどういう活動をしたいのかはっきりしないと、森を持っている方と中継ぎできないので、われわれも企業が何をしたいのか探り、協力していくのが大事だと思っています。


写真左:チェーンソー入門研修、写真右:ロープワークを使った伐倒
─ こうやって聞くと、企業との連携は大変ですね。
佐藤:企業は単発でやりたいという希望が多いですから。これだけお金を出すから、何とかしてほしいと言われても、お金ではできないものがあります。
自分達が活動している里山では、地権者の理解があって一緒に活動しているのでやりやすいのですが、森をこういう風に活用したいというビジョンを見せないと、地権者から理解を得るのは難しいかなと思いますね。
伊藤:千葉県には里山活動協定という仕組みがあって、行政の持っている信用力を活かして、細分化した私有林の地権者と活動団体の協定をまとめています。今後、企業と活動団体をつなぐ面でも、この視点なり発想を生かしていければと考えています。