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企業の森づくり

事業事例

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竹中工務店の考える「森林グランドサイクル®」

事業(活動)の内容・仕組み

竹中工務店では、都市部でより多くの建物を木造化・木質化することによって木材の需要を高め、日本の森林・林業・地域を活性化させ、森林と社会における資源と経済の循環をおこす「森林グランドサイクル®」の構築に向けて、林業事業者・各⾃治体など各方面のステークホルダーと連携し活動している。

「森林グランドサイクル®」は、森林は「植える→育てる→収穫する→使う→植える→…」という「森林サイクル」が維持されることで健全を保ち、また、「森林サイクル」は都市部や中高層といった木造建築の新たな市場が創出されることにより、持続可能となるとの考えに基づいている。

森林グランドサイクル®

事業(活動)を始めた背景・理由・経緯

竹中工務店が木造・木質建築に取り組む背景には、⽇本における森林・⽊材活⽤の現状にある。日本は、国⼟の約3分の2が森で覆われ、先進国で第3位をほこる世界でも有数の森林国ではあるが、日本の森林は危機に瀕していると⾔われている。

森林貯蓄量は8000万㎥ずつ年々増加をしているにも関わらず、国産⽊材の利⽤は2500万㎥で国内で使⽤する⽊材量の3割に留まり、近年の林業の低迷に伴って、⼿⼊れが⼗分に⾏われていない森林が増えている。成⻑が⽌まった⾼齢⽊ばかりになると、期待されている⼆酸化炭素を吸収・固定する機能にも⽀障をきたすことになる。このことから、⽇本の林業を活性化し、「⼭林の⼿⼊れ」「⽊材の利活⽤」をすることが必要とされている。

建築に⽊を⽤いることで、⽇本の森林を再⽣すると同時に、⽊の「ぬくもり・やすらぎ」への親しみといった従来⽇本⼈が持っていた記憶を呼び起こし、多くの⼈の関⼼を集めることを期待できる。

また、当社は1610年に創業し、神社・仏閣の造営の時代から⼀貫する「最良の作品を世に遺し、社会に貢献する」を経営理念としている。時代とともに変化する社会のニーズに対し、その時代の最適・最先端の技術を駆使し、最良の作品(建築)を⼿がけることで信頼を獲得してきた。

⽕災や地震に対する安全性、⽊の耐久性など多数にわたる課題へ挑戦し、「技術開発⼒」「設計⼒」「施⼯⼒」の連携により、⽊のイノベーションを創出している。このイノベーションによって、森林資源が建設市場で活⽤されることで、より活発な経済と資源の循環が期待できる。

事業(活動)の成果・効果

令和4年は「森林グランドサイクル®」を構成する4つの事象ごとに、下記のような活動を実施した。

【木のイノベーション】
下記の主な新規木造技術を開発

  • 耐火集成材‘燃エンウッド’の3時間耐火 (大臣認定取得)
  • 高軸力に耐える高層ビル向け‘燃エンウッド’4本束ね柱の開発
  • 木製ダボを用いたDLT工法の実用化
  • 木を用いてS造・RC造の構造補強を行う‘KIPLUSシリーズ’の拡大

【木のまちづくり】
下記の主なプロジェクトを創出

  • サントリー天然水 北アルプス信濃の森工場敷地内 レセプション棟、カフェ棟(2月完成)
  • 西部ガスグループ油山研修所建替(2月完成)
  • ポートメッセ名古屋(6月完成)
  • 甲南医療センター(10月完成)
  • 水戸市民会館(10月完成)
  • 岡山表町三丁目再開発(12月完成)

【森の産業創出】
下記の主な産業を創出

  • 内子龍王バイオマス発電所(10月開所 稼働開始)

【持続可能な森づくり】
森林活性化に向けて、川上川下の相互理解深淵のために、下記の主なイベント・講演・啓蒙活動を行いました。

  • サステナブルブランド2022 YOKOHAMA展示会/セミナー(2月)
  • 非住宅木造建築フェア展示・セミナー(6月)
  • 建築物木材利用促進協定を農水省様と締結(6月)
  • 木づかいシンポジウム セッション参加(10月)
  • キノマチ大会議(10月)
  • 成蹊大学森林伐採体験会(9月)

事業(活動)をスタートするまでの経過

竹中工務店では、「森林グランドサイクル®」の「持続可能な森づくり」の実証実験の場として、平成30年より、兵庫県川西市中央部の丘陵地にある、敷地面積約8haの自社の研修所の敷地において、従業員へ自然共生・森林保全・生物多様性の素養を身に着ける実務型研修を行い、「人づくり」を「森づくり」へつなげ、森林緑地再生を行っている。

令和4年には、約40名の従業員が約6日間の実地研修を受け、敷地内の森林整備を行うと共に、森づくりを通じた社会課題解決のスキルを体得し、プロジェクトを通じた、全国のまちづくりの場で力を発揮している。

今後の展開方向

「森づくり研修」では、森・人・技術を育て、社会課題解決につなげる以下の4つの活動を通じ、関係する多くの人と力を合わせ、自然を活かした土地利用や社会課題解決策を提案し、よりよいまちづくり、そしてサステナブルな社会の実現に取組んでいる。

  • 敷地全体を豊かな緑地に整備・保全
    放置された森林を社員の活動により再生・保全し森林機能を回復
  • 自然の力に気づき、学びあい、人材育成につなげる体験型森づくり研修
    社員による応募型の体験型研修を行い、毎年40名程の生物多様性の知見を有する研修修了生を送り出し、自社事業や社会活動で活躍
  • 実践・検証を通じ自然が持つ多様な機能を活かす技術開発
    敷地内において実践・検証を行い、森づくり研修活動と併せ、技術開発とそのノウハウの蓄積を推進
  • ステークホルダーとの連携・協働
    今後は、お客さまや地域の方々との連携を視野にいれた活動に繋げていく

事業(活動)の課題

生物多様性に関わる知見を有する人材を育成するとともに、実際のプロジェクトにおいていかに実装・展開し、社会におけるネイチャーポジティブをより一層加速させることができるかが課題である。