MENU

森づくりコーディネーター

Interview:森づくりコーディネーター✕企業

interview 02 森づくり企業

社員とコミュニティーが
一緒に取り組める森づくりを。

チューリッヒ保険会社 広報部 部長 
古屋 宏晃 さん

「明るい未来を共に創造する」企業パーパスから森づくりへ

以前はどんな仕事をされていましたか?

チューリッヒ保険会社に入社してこの4月で丸8年、広報の仕事をしています。以前在籍していた会社ではマーケティング中心の仕事をしていたのですが、広報担当者が退社したため、代わりにニュースリリースを発行するなど社内外のコミュニケーションを担当するようになって、それがきっかけで広報に関わるようになりました。

チューリッヒ保険会社と森との関わりについて教えてください。

当社の親会社である「チューリッヒ・インシュアランス・グループ」は企業のパーパスとして、「明るい未来を共に創造する」を掲げており、ステークホルダーとして「お客さま」、「社員」、「ビジネスパートナー」とともに「地域コミュニティ・社会・環境」があります。そしてサステナビリティのコミットメントとして、地球環境、温暖化の問題に取り組むことを宣言しています。

「チューリッヒ・インシュアランス・グループ」は、2014年にカーボンニュートラル企業になり、2019年には国連グローバル・コンパクト、「Business Ambition for 1.5℃」に保険会社として初めて署名。また、2020年にブラジルのアマゾンで、「The Zurich Forest Project」という失われた熱帯雨林を再生させる壮大な計画をスタートさせています。

そうした中、当社では、日本の豊かな自然を再生し、次世代に残したいとの思いから、森に関わる活動を始めることになりました。日本の場合は、森はたくさん残っているが樹齢が高くなりCO2吸収量が減っており、地域で森を手入れする人がいなくなって荒廃が問題となっているため、そこをサポートして行きます。とはいえ、当社一社だけではできることも限られるため、まずは皆さんが気候変動のことを考えるきっかけづくりから始めることになりました。

出典:チューリッヒ保険会社「チューリッヒのサステナビリティの取組み」より
「Zurich Hello Forest~日本の森と気候とキャンパーと」
(※プロジェクトは終了しています。)

もう一つ、キャンプ場でオフセットする仕組みもつくりを、パイロットキャンペーンとして実施しました。全国8カ所のキャンプ場でキャンパーの皆さまが国産間伐材のステッカーを1 枚 300 円で購入することにより、キャンプ1 泊 1 人当たりが排出する CO2 をオフセットできるという取り組みでした。

協定締結の決め手は、行政担当者の熱意と県の森林ボランティアセンターのサポート

西海市で森づくりを行うようになった経緯は?

社員や地域の住民の方々も参加できる森林保護再生活動をしたいとの思いで、全国の色々な自治体やNPOを調査し、情報発信がしっかりしている数十カ所の市町村にまず問い合わせをしました。その中で長崎県西海市がパートナーを探していることを知りました。当社は、長崎市内にオフィスがあり、200名弱の社員が働いています。西海市は車で1時間ぐらいの近さですし、なじみのある場所です。

そこで西海市に「地域の住民の方々と当社の社員も巻き込んだ活動をしたい。植林だけでなく森のサイクルを回し、森を再生することによって減災やコミュニティの活性化にも貢献したい。」と、こちらの希望を伝えました。すると、「企業と一緒に何か一つの取り組みができるのは市としてもありがたい。ぜひやって行きましょう!」と、ラブコールをいただきました。

長崎県および西海市との協業の決め手となったのは、長崎県や五島市などでずっと森林に携わってこられた西海市の担当者の方、その知見と熱意がすごかったこと。もう一つ良かったのは、長崎県の森林ボランティア支援センターがワンストップ窓口となって、県と市の調整などを行ってくれたことです。

東京ドーム約7個分の広さがある「チューリッヒの森」

「チューリッヒの森」づくりの活動内容や特徴を紹介してください。

「チューリッヒの森」プロジェクトは、長崎県西彼杵半島の雪浦川流域において、源流から川中、河口までの荒廃した森林や竹林を対象に、一体的な森林整備を実施します。

2022 年から 5 年間にわたり、5カ所、計33.98ha(東京ドーム約 7個分)を整備予定で、初年度は環境省が定める重要湿地で長崎県より自然環境保護地域に指定されている久良木湿原に隣接する森林の整備を行いました。最初は源流に近い場所から、最後は海に近いところの松林を再生しようという取り組みで、森づくりに関してはプロの方にきっちり詳細な計画を立て実行していただいています。

協定は、長崎県、西海市、チューリッヒ保険会社の3者で締結しました。5年間の協定ですが、更新も視野に入れています。

企業の森「チューリッヒの森」に関する協定書

「チューリッヒの森」で最初のイベントを、2022年12月10日に実施しました。この日は、当社の長崎オフィスの社員・家族60名、これに長崎の一般公募のボランティアのみなさま、地元の少年団、長崎大学の学生ボランティアの方々も加わり、合計約100名が参加。「森を整備するとはどういうことか」を知ってもらいたかったので、植樹だけで終わらずに、間伐、枝打ち、薪割り、薪運び、林道にチップをまくなど、5班に別れて全員が全工程を体験する、ということをしました。実施に当たり、西海市や長崎県の関係者のみなさまには多大なるご協力をいただきました。

参加した社員の感想が期待以上でした。90%以上が「またやりたい」と回答し、理由の一番は、「森について勉強できた、学べた」でした。間伐ひとつでも実際に体験して初めて大変さがわかった、さらに大変なことを何十年かけてサイクルを回しているからこそ森を守れるのだと、参加者にわかってもらえたことが一番の収穫でした。今度は、家族や友達と一緒に来たいという声も多かったです。

イベント当日の集合写真

ステークホルダーのみんなが関わる森づくりを最終ゴールに

将来どんな森にしたいか、イメージはありますか?

豊かな自然を次世代に残すため、「チューリッヒの森」では、森林の二酸化炭素吸収を促進し地球温暖化対策に貢献するほか、防災や水源涵養、保健休養など森林の持つさまざまな公益的な機能を強化するとともに、美しい里山づくりによる地域活性化につなげていきたいです。また、当社社員はもとより、西海市の市民の皆さまにも森林ボランティア活動に参加いただき、森林・林業や環境に対する意識の向上を図ることで持続的な活動となるようにと考えています。

チップが敷き詰められた「チューリッヒの森」の山道

できれば今後長く続けたいと思っています。まず今年は実施回数を増やしたいし、他の地域でも同じような形で活動したいと思っています。大阪と東京の近郊でどこか良い場所はないか探しているところです。

森づくりコーディネーターに期待すること

仲立ちする支援組織、森づくりコーディネーターにはどんなことを期待しますか。

私たちは森に関して素人ですので、これから学んでいくことが多くあり、森づくりコーディネーターのサポートが欠かせません。両者が知恵を出しあい、「チューリッヒの森」という資源を最大限に活かし、西海市の皆さまにも当社の社員にも価値あるものとなるようサポートいただけるとたいへん有難いです。

Message

森づくりへの参加を考えている企業・団体へ向けて、
一言メッセージをお願いします。

古屋 宏晃さん
企業にとっても自治体にとっても一緒に森づくり活動を行っていくのはチャレンジだと思います。ひとつひとつ小さな成功体験を積み重ねていくことが大切。次世代のために一緒に行動していきましょう!
interview02
コーディネーター
森づくり企業
一覧へ