Interview:森づくりコーディネーター✕企業

森づくりで地元とのつながりを持ち、地域に貢献したい。
まいばすけっと株式会社 経営企画部 コーポレート・ブランディング
店舗を運営するエリアへ地域貢献をしたい
どんな仕事をされていますか?
庄田:まいばすけっと株式会社経営企画部コーポレート・ブランディングで広報や社会貢献活動を担当しております。
大学時代に社会学部社会福祉学科に所属し、2014年ごろだったのでまだESGsという言葉でしたが、開発途上国の環境問題について学んでいました。授業の一環としてタイの山奥の農村部に行ったとき、村の中のくぼ地にプラスチックごみがあふれ返っていて衝撃を受けました。ごみを処理する施設がないのでただ捨てられ積み重なって山になって…。それを見て、直接的ではないにしても、日本をはじめとする先進国の企業の社会的責任を感じました。
就職で会社を選ぶ時は、まいばすけっとが事業を通して高齢者の買い物の利便性向上を図っていると知り、その考えに共感して入社しました。その後もやはり環境問題には興味があり、社内公募があった際に手を挙げて現在の部署に配属されました。

どうしてこの仕事に係るようになったのですか?
庄田:2020年のレジ袋有料化にともない、その収益を環境保全活動を行う団体に寄付しようという会社方針が打ち出されました。私が着任したのが22年で、21年から寄付を開始していたので、配属されて最初の仕事は、レジ袋収益金寄付贈呈式の日程調整や目録をつくることでした。着任初日に「水沢緑地に来てくれ」といわれ、部長とマネージャー、もう1人の新任と私で草刈りをした体験がとても新鮮で楽しく、印象に残っています。「ここで活動を始める」と言われても、まだよく脈絡も会社の意図もわかっていませんでしたが(笑)。
そこからしばらくは森づくりをやる意義がしっくりこなくて、意義を自分の中に落とし込むのに半年ほどかかりました。腑に落ちるようになったきっかけは、川崎市さんや、かながわトラストみどり財団さん(以下トラスト)を通じて地域の方の声を聞けたことでした。まいばすけっとが植樹した場所は、もともと藪になっていて薄暗く危なく、ゴミの不法投棄もされていました。でもそこが定期的な手入れによって整備され、開けて安全になっていく。そんな様子を見守っていた近隣の方が、すごく喜んでくださったとわかり、少しは役に立てているのだなと、やっと実感できました。「地域に貢献したい」というのは、弊社社長も事あるごとに口にしています。

貴社が森づくりを始めようとしたきっかけは何ですか?

庄田:弊社は2005年の創業時から、「近い、安い、きれい、そしてフレンドリィ」をコンセプトとして、都市部に住まわれている方にお買い物環境を提供できるよう出店を続けてきました。お店を出店して運営するだけではなくて、自然環境への貢献を何かできないかという考えのもと、レジ袋の収益金を緑の募金に寄付しました。さらに、私たち自身が体を動かして活動できることがないかなと、トラストさんにご相談させていただいたところ、保全活動もしてみないかとご提案いただき取り組みを始めました。
親会社であるイオンが行う森づくりはいくつかあって、千葉県君津市の「君津イオンの森」に植樹をしに行ったこともあります。ただ、この活動は、植樹や部分的な整備だけでしたし、弊社社員にとっても単発のイベントであったことや、現場まで遠いこともあって、継続的ではないな、もっと近くで、まいばすけっとの出店エリアの中で活動できる場所があればと感じていました。
出店エリアで、お客さまや従業員の近くで活動できる場所を選ぶ
活動場所を決めた理由を教えてください。
庄田:神奈川西部、箱根や秦野、丹沢等の緑地も幾つかご紹介いただきましたが、出店エリア内でお客さまや従業員の近くで活動したいという想いがあり、川崎市で活動させていただくことに決めました。

候補地を挙げていただいて、川崎市内でも何カ所か現地を視察させていただきましたが、水沢以外の場所は傾斜が厳しい緑地でした。比べると水沢は人が集まりやすい平地もある緑地です。やはり安全が第一なので、人が集まってもリスクが少ないような緑地ということで水沢を選びました。アクセスも良く、川崎の事務所から1時間ほどで行けます。
竹林整備、植樹、たけのこ掘り、草刈り、レッサーパンダの餌も。
「まいばすけっとの森」での活動内容を教えてください。
庄田:神奈川県川崎市宮前区の水沢特別緑地保全地区というところで、里山保全活動に取り組んでいます。現状、4エリアあるうちの植樹エリアと竹林エリアで活動しており、合計年4回、基本は春と秋に活動しています。具体的には、4月に竹林の整備としてたけのこ掘り。6月に植樹地の下草刈り、さらに9月か10月にも植樹地の草刈り。11月の活動では竹の間伐をして、集めた竹の葉を地元の夢見ヶ崎動物公園に進呈し、レッサーパンダの餌として活用いただいています。




竹林の整備と川崎市夢見ヶ崎動物公園へモウソウチクの葉を届けたときの様子(まいばすけっとインスタグラムより)
活動は2025年で4年目になります。参加人数は、2024年度は延べ220名ほど。2022年から始めて2024年11月の11回目までで延べ450名ほどになります。従業員だけでなくまいばすけっとに興味を持ってくれて環境活動に関心があるインターンシップの学生さんにも参加してもらっています。
たけのこ掘りやレッサーパンダに贈呈する竹林整備の回は人が集まりやすいので、ボランティアとして参加を募っています。一方、定期的に作業が必要な夏の下草刈りは、新入社員研修の一環として実施しています。2024年度は午前中に活動の意義を説明して理解してもらってから実際に身体を動かしてもらうというプログラムで実施しました。意義も大事ですけど、続けていくことや、何度も来てもらうことが大事だと思っています。社内コミュニケーションの場としても活用しています。
活動はとにかく安全第一。もし一度でも怪我や事故があると、それが縮小したりやめたりというきっかけになってしまうので、そこは一番気をつけています。
協定締結までにどんなことをしましたか。
庄田:2024年3月15日に協定を締結、その1年前には覚書を締結していました。結ぶに当たり、川崎市側で幾つか必要なことがあり、動植物、昆虫、鳥の調査を春と秋と夏と、年3、4回行いました。現状はどんな生態系になっているのか、今後どうすればより良い里山になっていくのか、私たちができる範囲とトラストさんからアドバイスいただいた内容を、概要書にまとめていただきました。それが「水沢特別緑地保全地区保全管理計画書」です。

その中で現状分析と今後の展望を、私たちが考える希望というか、こうなったらいいなというのと、現実的な活動ができる範囲とかと、植生がどうしていったらより多様になるのかというのを議論しながら、どこまでできて、どこまでできないとか、エリア分けや優先順位なども、その時に決めました。作成にあたってはトラストさんが調整に動いていいただいて、みんなが納得する形になったと思います。
本格的に活動を始める前に近隣にお住まいの方には、川崎市から説明していただきました。自治体の方、町内会の方、周辺の20世帯くらいは直接お話に伺ったりもしました。
苦労したこと、楽しかったこと、こころに残っていることなど。
庄田:参加者を定期的に、ある程度の人数集めるということが、私の業務の中では大変さを感じています。当初から社長は、「みんなに1回は行かせたほうがいい」と言っておられたので、それを後ろ盾にして、研修を担当している部署と連携して、スケジュールに組み込んでもらい、1回当たり20~30人、多くて50~60人に一気に来てもらっています。ボランティアの回と研修の回とに分けて、楽しい要素も考えながらそれぞれ来てもらっているんですけど…。3年続けてきてマンネリ化してきているので、ボランティアだけだとなかなか難しいですね。来年くらいにはまた新しいやりかたを考えていきたいと思っています。

一方、嬉しかったのは、頑張って下草刈りをして植樹した木が順調に育ってくれていること。目に見える形で育っていると、やって良かったと心から思えます。植樹した人たちが再訪して、「こんなに大きくなったんだ」と喜んでくれたりするのも単純に嬉しいですね。あと、店舗内での仕事が多いので自然の中だと従業員のみなさんも普段と違う表情が見られたりしますし、明るくフレンドリィな感じでコミュニケーションがとれているのも、自然のおかげだなあと嬉しく思っています。
連携と情報共有がスムーズで、「誰も蚊帳の外になっていない」
仲立ちする支援組織や森づくりコーディネーターに期待することはありますか。
庄田:川崎市もトラストさんも、ご両者がいてくださったからこそ続けて来られたので、本当にありがたいと思っています。トラストさん経由で川崎市と「公園緑地協会」という川崎市の協会と実働部隊と調整いただいたり、看護師さんをご手配いただいたりもして、本当に助かっています。
私たちは素人なので、何を用意したらいいのか、どのぐらい時間を要するのかなど基本的なことも全然わからなくて。参加者がどういう服装をしたらいいのか、どういう心構えが必要なのかという初歩から一つずつ教えていただけて安心でした。一方で、指摘いただくところはきっちり言ってくださって、緩急のバランスが良くて。

川崎市も、緑地に関わる関係者には毎回声をかけて、必要な部署は来ていただいていて、その連携がよく取れているんだなと実感しています。また、「地域の方からこういう声がありました」など、共有してくださるのもありがたいです。リアルタイムで、誰も蚊帳の外になっていない感じがします。
いずれは地域の方と一緒に木を育て、お花見したい!
今後の展望を教えてください。
庄田:春に桜が咲いたら地域の方や従業員、その家族がお花見に来たり、定期的に自然を求めて気軽に行ける場所、地域の子どもたちが楽しく遊べる場所にしたいと思っています。植樹した木があるだけで、思い入れが全然違ってくると思うんです。「この木、お父さんが植えたんだよ」なんて、誇りを持てるというか…。そういう木になってほしいなと。今は社内にとどまっていますが、いずれは地域の方と一緒に育てていきたいと思います。
■まいばすけっとさんから提供された笹を食べている夢見ヶ崎動物公園のレッサーパンダ
高齢のレッサーパンダには、消化を助けるため、ミキサーで粉砕した笹の葉をペースト状にし、フルーツなどを加えたものを食べさせています。


(写真:夢見ヶ崎動物園)