森づくり基礎知識
森づくりイベントの作り方
林業は危険な作業を伴なう仕事のひとつですが、しっかり準備をすることで、一般の方でも自然の中で気持ちよく体を動かし、楽しく有意義な森づくりイベントに参加いただくことができます。ここでは、企業側の担当者さんがイメージしやすいよう、抑えておきたいポイントについて簡単にご紹介します。森づくりコーディネーターと相談しながら、森の遷移にあわせて、継続的な活動を楽しんでください。
1.イベント会場と交通手段を決める
協定を締結した「企業の森」で森づくり活動をされることと思いますが、プログラム内容や参加人数にあわせて、場所をどのように使うかを考えます。使わせてもらえる駐車場やトイレが近くあると運営が楽になりますが、駐車場がない場合には、最寄り駅から貸し切りバスやタクシーを手配します。なお、終了後に立ち寄れる温泉など汗を流せる施設が近くにあると、参加者に大変喜ばれます。
2.イベントの趣旨や目的を明確にする
環境保護活動や、社会貢献活動など、企業・団体が森づくりイベントを開催する目的を(社内外に発信できるように)明確にします。近年はSDGsに向けた活動の一つとして開催されるイベントを多く見かけます。SDGsは、持続可能な社会の実現にむけて取り組むべき17の目標を掲げており、これに照らすことで、水を大切に使うことや、使い捨て容器の選び方など、企業・団体が発信するイベントとして事前に検討しておくべきポイントを見つけやすくなります。
3.開催日程を決める
プログラム内容にもよりますが、初めて開催される場合には、想像以上に多くの手配・準備が必要ですので、余裕を持って日程を設定しましょう。地域によって、雨の多い季節、害虫の多い季節など、避けたい時期もあれば、花や紅葉など景観が美しい季節、キノコや柿の収穫ができる時期など魅力的な時期がありますから、現地を良く知るコーディネーターと相談しましょう。また、「〇〇の日」や、企業・団体にとって特別な意味のある日程を選ぶと、覚えやすく、広報にも役立つことがあります。
4.プログラム内容・進行を決める
近年では、植樹や間伐、下草刈りなどの林業体験だけでなく、自然観察などの環境教育や、木工クラフトやアート、森林浴などウェルビーイングのプログラムと組み合わせたり、企業研修としてチームビルディングを目的に開催される例もあり、森林をフィールドに、様々な森づくり活動が実践されています。休日の午前中に開催されることが多く、以下に進行(時間配分)の一例をご紹介します。
森づくりイベントのプログラム進行例(午前中の開催・およそ3.5時間を想定)
9:00 最寄り駅集合(受付・事前に班分けをしておく)
9:30 現地到着〜開会の挨拶
9:45 活動の目的や森づくりに参加することの意義などについて解説
9:55 全体進行・注意事項などについての説明・スタッフ紹介
10:55 班ごとに 道具貸し出し/それぞれ移動
10:30 森林内で作業(1.5時間/休憩含む)
12:00 片付け・終了後の感想共有・質疑応答など
12:20 閉会の挨拶
12:25 記念撮影
12:30 昼食・随時解散
5.参加者を募集する
道具やお弁当の手配など、事前準備が必要になるので、早めに大まかな参加人数を把握します。企業・団体が社内に向けて参加者を募集するだけでなく、地域住民からも参加を募りたい場合も、コーディネーターに相談しましょう。募集時に最低限必要な情報は以下になります。
- 開催日時(雨天の場合の連絡方法も)
- 集合と解散場所
- プログラムと作業内容
- 服装(長袖+長ズボン、歩きやすく脱げにくい靴、できれば黒色を避ける、など)
- 持ち物(飲み物、お弁当、タオル、軍手、スマホ・記録用カメラなど)
- この活動の目的や意義
6.苗木を調達(植樹をする場合)
樹木の苗は、スーパーの野菜のようにいつでも購入できるといったものではありません。地域の種苗会社に依頼して必要本数・樹種などを事前に確保しておく必要があります。コーディネーターか森林組合などを通して早めに準備しましょう。
7.作業のための道具を調達する
作業道具は、森づくりコーディネーターが所属する組織や、森林組合などから借りることができます。ヘルメットや手ノコなど、参加者人数分の道具が必要なものは、作業内容が決りだい、貸し出し可能な道具類を集めておいて貰うようコーディネーターに相談しましょう。
8.参加者のための、設備を整える(救護テント、仮設トイレなど)
参加人数にもよりますが、運営スタッフが常駐する仮設テントを用意すると、皆が動きやすくなります。資料・資材置き場になったり、怪我人が出た場合の救護テントにもなりますし、参加者にとってもスタッフがどこに居るのかが把握できて、安心です。
トイレは参加人数に応じた数が必要になります。近隣施設で利用可能なトイレを確認し、足りない場合は、仮設トイレを手配してください。難しい場合は、募集人数を減らす、開催時間を短縮するなどの調整が必要な場合も。トイレットペーパーなど消耗備品の確認も忘れずに。
9.安全管理、保険の加入
初心者のための安全読本などが出ていますので、スタッフの方にはこれらの資料で事前学習をしておいてもらってください。合わせて、ボランティア保険への加入、救護テント、救急セット、警告テープなども準備しておきます。もちろん大きな事故が起きないように注意を払う必要がありますが、注意をしていても、転んで切り傷をつくる、虫に刺されるなどといったことはよくある事ですから、慌てず動けるよう、準備しておきましょう。
10.広報・PR
企業や団体の森づくり活動をぜひ広く発信してください。写真や動画などの記録(※)を担当するスタッフを進行役とは別に手配しておくと記録漏れを防ぐことができます。また、スタッフのSNSなど、当日素早く発信できる手段を検討しておくことも有効です。なお、協定締結の時点でプレスリリースを配信し、地元新聞などへ連絡しておけば、活動内容を取材・掲載してくれることもあります。
※参加者には事前に写真撮影の許可を取りましょう。
11.次回開催に向けて・その他
作業後、地域の魅力を伝える美味しいお弁当を食べてもらうと、イベント全体の印象がぐっと良くなります。どんな食材で、どんな人が作ってくれたのかも併せて紹介することで、地域外からの参加者のみならず、地域内の参加者の関心も深めることにつながり、「また参加したい」という前向きな気持ちを後押しします。