森づくり基礎知識
森林の所有と利用
日本の森林面積は平成29(2017)年3月末現在で2,505万ha。国土面積3,780万haのうち約3分の2を森林が占めています。これを所有形態別にみると、森林面積の57%が個人や企業などが所有する「私有林」、12%が自治体等の所有する「公有林」、31%が国の所有する「国有林」です。
「森林面積の内訳」合計2,505万ha(単位:万ha)
国有林
我が国の森林のうち、約3割を占めるのが国有林です。
「国有林」は、明治維新の際に藩有林、社寺有林、所有が明確でない森林を継承して成立しました。それ以降、民有林の中の重要な森林(保安林など)は「買い入れ」、国有林として国が維持する必要のない森林を「売り払い」、国が管理経営を行っています。「国有林」は全国各地に広がり、その多くは地形の急峻な奥地の山々や河川の源流に分布しています。また、原生的な天然林も広く分布し、野生動植物の生息地や生育地として重要な森林も多く含まれています。そのため、森現在は全国7つ(北海道、東北、関東、中部、近畿、四国、九州)の森林管理局が組織されています。
民有林
我が国の森林のうち、約7割を占めるのが民有林です。
「民有林」は、私有林と、都道府県林、市町村林などの「公有林」に分けて見ることができますが、中には、複数名による共有名義林、森林組合などによる生産森林組合林といった「共有林」も多く、明治以前の「入会(いりあい)」(地域の住民が立ち入って共同で管理し利用すること)の名残りで「入会慣行」を伴う森もあります。
また、公有林の中には「財産区有林」といって、1953年の町村合併促進法によって町村が合併される前の公有林も多く存在します。現在の町村ではなく、合併前の地域「財産区」で管理されている森林です。
森林の所有と利用
このように、森林の所有には歴史の変遷に伴い、いろいろな所有形態があります。"もう誰も気にかけていないのでは?"と思われるような限界集落の森にも、法的に所有者が存在します。企業や市民が社会貢献を目的として手入れが必要な森林に手を入れ、森づくりを始めることは公益に資する活動ですが、それは所有者の森を利用することでもあり、所有者の意向を確認し森林整備計画を立てる必要があります。
企業の森づくりサポート制度
「企業の森づくりサポート制度」とは、企業・団体が自社で所有していない国・公有林や民有林で行う森づくりをサポートする様々なしくみの総称で、ほぼすべての都道府県にあります。都道府県の担当部局、森づくりコミッション、緑化推進委員会などが森づくりの窓口やコーディネーターとなって、企業・団体と森林所有者とをつないで協定を締結し、それぞれの目的にあった森づくり活動を支援します。
分収林制度
「分収林制度」とは、森林の所有者ではない者が、契約によって、その土地で造林・育林をし、育った木を伐採して得た収益を森林所有者と造林・育林者の2者、あるいは森林整備の費用負担者を加えた3者とで分け合うことを認めた制度です。土地は土地所有者のものですが、立木は所有者と育林・造林する者らで共有されます。「法人の森林(もり)」制度は、企業と国とが契約し、造林・育林事業を行う分収林の事業です。
保安林制度
保安林とは、水源の涵養、土砂の崩壊その他の災害の防備、生活環境の保全・形成など、特定の公益目的を達成するため、農林水産大臣又は都道府県知事によって指定される森林です。保安林では、立木の伐採や土地の形質の変更等が規制されます。私有林であっても、森林の公益機能の維持を優先しなければなりません。水源かん養保安林や土砂流出防備保安林など、保安林の種類はその指定の目的により17種類あり、我が国の森林面積の約5割、国土面積の約3割を占めています。
参考:林野庁「保安林ポータル」
所有者が不明な森林
私有林には、所有者が高齢であったり亡くなっていたりして、継承者が不明になっている場合があります。また、隣地との境界が曖昧であったり、「地番の境」と「所有権の境」が一致していなかったり、公図や実測図と実態とが食い違う例もよくありますので、注意が必要です。
森林には、一般用地と比べて複雑な所有形態、利用実態がありますので、企業や市民が森づくりのフィールドを探す場合には、「森づくりコーディネーター」に相談いただくことをおすすめします。地域の森林の現状や所有をめぐる諸事情などを把握している人や組織に相談することで、トラブルを回避し、活動の目的にあった森林に出会って円滑にプロジェクトを進めることが可能になります。
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